
わが家のほのぼのエピソード
35 予期せぬ出来事 1

2匹のネコ、しおととろろとの新しい生活が始まって約2か月。
まるで昔からずっと一緒に暮らしていたかのように、この2匹の存在がわが家の生活の一部となり、いつものようにまったりと家族での時間を過ごしていた、ある日の夜のことでした。
私達にネコを飼うことを勧めてくれた近所の友人家族から、何やらとても慌てた声で電話が来たのです。
「そんなに慌ててどうしたの?」と聞くと、「とにかく、ちょっとうちの前まで来てほしいの!」とひと言。状況がよく分からなかったので、家を出る前に、とりあえずある程度の事情を聞かせてもらうことにしました。
友人の話によると、その日の夜友人宅のすぐお隣にある家の庭で、姿こそは見えないものの、「ミャーミャー」としきりに鳴いている声が聞こえてくるというのです。
「もしかすると、子ネコが捨てられているかもしれない」という話を聞き、私達親子も慌てて家を飛び出しました。
急いで友人宅に駆けつけ、お隣の家の庭付近に行ってみると・・・、確かに、必死に鳴いているネコの声がハッキリと聞こえます。
ところが、ネコがそこにいるのは確実だったのですが、真っ暗な中でどこにいるのかがまったく分かりません。仕方がないので庭の持ち主でいらっしゃるお家の方にお願いして中に入らせていただき、皆で手分けして探すことにしました。
実は、そのお宅に住んでいらっしゃるお母さんも、ご自身の自宅庭にネコがいることには気づいていたそうなのです。
しかし、そのお宅ではすでに年老いた3匹のネコちゃんを飼っていらっしゃることと、飼い主であるご本人もそれなりにお年を召していらっしゃることから、これから新たに子ネコを飼い始めても長く育ててあげられる保証がないので、軽い気持ちで手を差し伸べてしまうとかえって無責任になるのでは・・・との懸念があり、保護することを躊躇しておられたそうなのです。
・・・確かにそうですよね。
そのお母さんがおっしゃった通り、たとえネコちゃんを無事保護したとしても、そのあと責任をもって育てる覚悟がないのなら、中途半端に手を出してしまうことが逆にかわいそうな結果を生む可能性もあるのですよね。
さらにこの捨てネコちゃんがもし野良猫の子どもであった場合、家で飼われているネコにはないような様々な菌を持っていたり、他のネコに移ってしまう病気などを持っている可能性が大いにあるので、もともとネコちゃんを飼っているお宅からしてみると、そのようなリスクを承知の上で保護しなければならないことになります。
予期せぬ突然の出来事に、しばらく頭を悩ませました。自分がネコちゃんを保護したとしたら、最後まで責任もって助けることができるのだろうか。
・・・色々考えた結果、私はやはり、目の前にいるのが分かっている小さな命を放って帰ることはできませんでした。
とりあえずわが家で引き取り、自宅で飼うか里親を探すかは後でしっかり考えるとして、とにかく今はこの子の命を救うことが先だ!と思い、ネコちゃんを保護することに決めました。
幾度も聞こえるその鳴き声だけをたよりに、皆であちこち探し回っていると・・・
いました!生まれてまだ間もないんじゃないかと思うほどの、とっても小さなネコちゃんが1匹・・・!
そのネコちゃんはひどく怯えていて、塀の隅にある木の後ろに小さく丸まって隠れていました。
やっとの思いで探しあてたのもつかの間、今度は私達に見つかったネコちゃんがビックリしてあちこちに逃げてしまいそうだったので、慌ててみんなでネコちゃんを取り囲み、ケガをしないようそっと保護することに何とか成功しました。
抱き上げたその子の姿を見て、改めてビックリしました。おそらく生後まだ1か月にも満たないくらいの、本当にちっちゃい赤ちゃんネコです。
いったいどの様な状況で、どこからこの場所へとたどり着いたのか・・・
いったいどのくらいの時間、たった独りで寂しくさまよい歩いていたのか・・・
手のひらにチョコンと乗ってしまうほど小さい子ネコちゃん。長い間食事を取れていなかったせいなのか、やせ細ってガリガリの状態でした。
そして自分の身を守るため、木や土のある場所にずっと隠れていたのでしょう。体全体に薄汚れた泥がこびりついてしまっている状態でした。
子ネコちゃんを保護した私達は友人家族と一旦わが家に集まり、しおととろろが赤ちゃんの時に使っ ていた小さなケージをひっぱり出してきてその子をケージの中に入れてあげました。
そして、外にいる間はご飯をきちんと食べられていなかったと思うので、すぐにキャットフードを用意して与えたところ、ものすごい勢いでご飯に食いついてきたのでした。
ご飯をひとしきり食べた後、はじめて会った私達のことを警戒しているのでしょうか、ケージの隅っこに置いたタオルの上に丸くなり、まだひどく怯えているような感じでした。
それでもこの子ネコちゃん、保護されたことで安心したためか、お庭で鳴いていた時の鳴き声とはまったく違う落ち着いた鳴き声へと変化していました。
きっと生きていくために、自分の存在を誰かに気づいてもらおうと必死だったのでしょうね。
・・・仮に、この状況を人間に置き換えてみたらどうでしょう。生後間もない赤ちゃんが外に捨てられているなんて、普通ではあり得ない話ですよね。
いいえ、逆にここでネコだとか人だとかの区別なんてする必要は一切ないと思うのです。ネコも人も同じように、大切な生命であることに何も変わりはないのですから。
この子ネコがもともと野良猫として生まれてきたという可能性は大いにありますが、それにしても生後間もない乳飲み子が親と離ればなれになって1匹で過ごしているなんて、決してあってはならない状況だと感じます。
ましてやこれが、人間に飼われていたのに飼い主が意図的に捨てていったのだとしたら・・・そのようなことを考えれば考えるほど、胸が締め付けられる思いでいっぱいになりました。
まぁとにかく、子ネコちゃんの命は何とか助けることができたのでそれは良しとして、次はこの子をどうやって育てていくのかを考えなければ・・・
現状況からすると、わが家にはまだ生後4か月の子ネコが2匹いて、つい先日予防接種が終わったばかり。どんな病気や菌を持っているか分からないネコちゃんとすぐに同じ部屋で住ませるのにはいろんな意味でリスクが大きすぎます。
「とりあえずはすぐに捨てネコちゃんを動物病院に連れていき、まずは健康診断を受けさせてあげないと。いずれにしてもしばらくは部屋を一緒にすることができないので、病院の先生にも対応策を相談してみよう」、と考えている私の横で、友人が「里親も一応探してみよう」と言ってくれ、何軒かの知り合いにメールを入れてくれていました。
その様な感じで、様々な人達に協力をお願いしつつ、子ネコちゃんはしばらくの間わが家で責任をもって預かることになったのでした。
(平成26年4月頃の出来事より)
パート2に続く