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スピリチュアルな日常

​「許す」ということ 前編

今回は、私が22歳の頃に体験した貴重な出来事をお話しようと思います。

 

私は高校を卒業した18歳の春、とある企業に就職をしました。


当時、私の実家は家計が苦しかったため、大学に進学をする経済的余裕はなく、私を含め私の姉妹達はみな就職して自分のこずかいは自分で稼ぎ、家庭の生活費の足しになるようにと、お給料の中から数万円を両親に受けとってもらっていました。


・・・就職してからあっという間に4年ほどが経ち、1社会人としての自覚がやっと出始めてきた頃のことです。


仕事はある程度こなせるようにはなっていたものの、私は昔から何事に関しても不器用なところがあったために、業務成績は一緒に入社した同期の子達に比べて大きな遅れをとっていました。

会社が終わった後同期会などで集まると決まって仕事の話題になるのですが、同期のみんなに言われるひと言は、「あんたは本当に要領が悪いよ~。もう少し上手くやんなよ~!」というものでした。


要領が悪いのは自分自身が一番分かっていることなのに、それをどうにも出来ない自分がいて、仕事に対する自分の力量不足に、自信を失っている頃でもありました。


さて、ここからがお話の本題なのですが・・・


当時、私が配属されていた職場の中に、主任という役職でバリバリと仕事をこなしていた女性の先輩が1人いました(以下、先輩をAさんと呼ばせていただきます)


Aさんが仕事に関して人一倍厳しいということは社内でも有名で、いつも失敗ばかりで不器用だった私は事あるごとに、Aさんに個人的によく叱られていました。


Aさんはどういうわけか、他の人達には穏和でも私に対してだけはとても厳しく、公私共に注意を受けたことを今でもよく覚えています。



これは当時会社の友人から聞いたお話なのですが、私は仕事があまりできないうえに、同じ職場の男性とお付き合いをしていたことが彼女にとっては気分が良くなかったようで・・・。汗


Aさんに叱られ落ち込んでばかりいる私に、友人は「色々言われても、あまり気にしないほうがいいよ」とよく声をかけてくれました。


しかし、情けないことにその頃の私は、仕事に対する自信のなさからAさんの存在を極度に恐れるようになっていました。


「自分の仕事に責任を持ち、しっかりとこなしたい」という思いよりも、「できるだけ目立たないように、怒られないように仕事をしなくては」という気持ちの方が強かったのです。

ちなみにAさんは、職場では「庶務」を担当していました。私は、というと、日常は違う業務を担当していたのですが、実は、彼女が有休などで会社を休む場合には、私が代役として庶務を担当することになっていました。




・・・そんなある日、Aさんが突然の体調不良で会社を休むことになったのです。

その日は私が、急きょ庶務を担当することになりました。


私は「Aさんの代わりなんだから、絶対間違えないよう完璧な仕事をしなくては」とドキドキハラハラしながらも、なんとか無事1日の仕事をやり終えました。


翌日、体調の良くなったAさんが出社し、私は前日の仕事の引継ぎをしました。

1つ1つ仕事の内容をチェックしている彼女の横で、もう心臓は飛び出そうなほどドキドキ・・・


すると、仕事の内容が書いてあるチェック表を見ていたAさんが、「あれ?この書類1つ足りないじゃない!」とひと言ったのです。


どうやら、前日私が庶務係から回覧にまわしたはずの「通達書類」が一枚無い模様。



「なんで無いのよ!」と厳しい表情で問い詰めてくるAさんの前で、私は頭が真っ白になってしまい・・・。その後ふと我に返った私は、慌てて無くなった書類を捜し始めました。


書類を捜し始めてから数十分後・・・見つかりました。

庶務係には、毎日本部から社内へ重要な書類を届けるための「メール便」というバッグが届くのですが、実は私、バッグの中から例の通達書類だけ出し忘れていたのです。


バッグの中に入っていたのですから、当然、回覧にまわってるはずがないわけで・・・



この時私が正直に、「すみません。書類を1枚出し忘れていました」とひと言口にできていたなら、きつくは叱られたものの、事はまるくおさまったのかもしれません。


しかしその時私は、「Aさんに怒られたくない」という極度の恐怖心から、思いもよらない、とても恐ろしい行動に出てしまったのです。


(平成21年5月 記)

続きは後編へ


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