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あなたの個性はママの宝物

​13 学校教育の体質について思うこと 2

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では、前ページでお話をさせていただいた日本における学校教育の体質について、子ども達が置かれている現状況を、もう少し内容を掘り下げて考えてみたいと思います。


現在、子ども達が通う学校で、何らかの理由によって学校という場にうまく溶け込むことができず、不登校になってしまっている子ども達が数多く存在しています。


パート1でご紹介させていただいた古山明男さんがおっしゃっていたように、学校における現在の不登校者数は、実に13万人を超えてきているそうです。


この深刻な状況をどの様に捉え、私達保護者や学校の教職員の方々は、子ども達の今後のためにどの様な対応をしていくことが必要でしょうか?


子ども達が今後年を重ね様々な環境の中で生きていくためには、学校という集団生活を通じて社会に適応できる力を身につけるということ、また、人間関係を円滑に築いていくための協調性を養うことなど、学校は勉強以外にも子ども達が成長していく過程において、家庭ではなかなか吸収できない多くのものを学ぶことができる貴重な場です。


しかしその反面、国によって定められた学校の教育システムというものが、子ども達の明るい未来を形成するどころか、逆に子ども達の今後の人生に取り返しのつかない危機的状況を招こうとしてしまっている点があることも、紛れもない事実であるのではないかと私は感じています。


先述したように、現在膨大な数の不登校児が増えてきているという事実が浮き彫りになってきていますが、とても悲しいことに今の日本の教育システムの中には、「学校に通うこと以外の方法で教育を受けられる」という正式な受け皿が設けられていません。

 

日本は憲法で就学義務を定めている、と思っている人が結構多いようである。

これが、違うのである。


憲法ではない。

憲法26条は、保護者が子どもに普通教育を受けさせる義務を定めているだけである。


教育基本法も、普通教育を受けさせる義務としていて「就学義務」としてはいない。

学校教育法という法律で、はじめて就学義務が現れる。

日本の義務教育の構造そのものは、意外と柔軟なのである。

だから、「家庭で受けさせる普通教育」や「フリースクールで受けさせる普通教育」が、法律で定められて義務教育とされてもかまわないのである。

​​

(古山明男さんのブログより1部を抜粋)


 

上記のように、憲法や教育基本法の中で、義務教育の構造が柔軟な方針として掲げられていて、それがちゃんとした形で機能できていれば、こんなにも多くの不登校児が生み出されることはないような気がします。

様々な問題を抱え学校に行くことができなくなってしまった子ども達にとって、1度離れてしまった学校へと再び戻るのは容易なことではありません。本当に大きな努力と勇気が必要になってきます。


周囲の人達は不登校の子ども達に対し、「休む時間が長くなればなるほど学校に行きづらくなるよ」といった言葉をよくかけますが、それは子ども自身だって重々承知しているのです。


気持ちではちゃんと分かっているのに、それでも行くことができないのです。​

そんな数々の不安要素を抱えた子ども達に、心の問題がきちんと解決できていない状態で無理をさせてしまうと、かえってその子のプレッシャーやストレスを増幅させ、状況はさらに悪化してしまいます。


何らかの理由で学校や人間関係に対し1度感じてしまった様々な不安や恐怖心は、時間が経過すれば簡単に解消し、「学校へ復帰できればもう問題はない」というような単純なものではないのです。

​​

そして勉強についても、学校を長期間休んでしまうことで今度は勉強に追いつけなくなってしまう、といった大きな焦りと不安が本人の心の中に生じてきます。


学校を欠席している間何とか勉強を進めようとしても、まだ習っていない数々の教科を家庭で自主的に進めていくことは非常に難しいのです。


しかし、学校側からは欠席中の勉強に関するサポートなどは一切なく、「学校に来れない間は自宅でうまく方法を見つけて授業に追いつけるようにしてください」という一言が返ってくるのみ。


子ども達は法律によって9年間の義務教育を課せられながらも、学校へと通えなければあっけなく学校側から放り出される形となってしまい、学ぶ手段を失ってしまうのです。


結果、学校生活を送ることが日常の中心である子ども達は、普通に登校できなくなってしまった時点で「自分にはもう行き場がない」と強く感じるようになり、「学校へ行けなくなっちゃったから自分は落ちこぼれなんだ」とすべてのことに自信や意欲をなくし、激しい自己否定感に襲われてしまうことが多いようです。


さらに子ども達が学校で不登校になってしまった際、クラスを受け持つ担任によって子ども達への対応がまったく異なる、という学校側のバラついた体制にも私は少々の疑問を感じています。

先生の中にはとても親身に、子どもの気持ちに寄り添って対応してくださる先生方も大勢いらっしゃいますが、逆に自分のクラスの生徒だというのに、まるで他人事のように知らぬ顔をして不登校児をほったらかしにしている先生方もいます。


生徒1人1人に対し、真摯に向き合ってくださる担任の先生とうまくめぐり合えなかった子ども達は、その後の義務教育期間をどのように過ごしていけば良いのでしょうか?

​​

集団生活という環境の中で、人と関わるための強さを養っていくことはとても大切だと思いますし、生きていくうえで欠かせないものです。しかしそもそも人間とは、1人1人が皆異なる個性を持った生き物であり、皆が同じことを同じようにできるわけではありません。


目の前に何らかの困難が訪れたとき、その困難を何とか乗り越えようとする心の強さを持つ者もいれば、逆に乗り越えたくても簡単に乗り越えることができない心の弱い者もいる。


不登校で悩んでいる子ども達の多くは、学校で起こる幾多の課題を乗り越える強さを持てずに、様々な精神的ストレスやプレッシャーに押しつぶされてしまった結果、苦渋の思いで学校へ行かない方の選択をとったのです。

​​

私はこのような子ども達を、「ただ甘えているだけのわがままな子」だとは思いません。


私の周囲で現在不登校になっている、小さな頃からずっと地域で見守ってきた数名のかわいい子ども達は、学校という集団生活にこそ馴染めはしないかもしれませんが、1人1人が素晴らしい個性を持った素直で優しい子達ばかりです。


私はすべての子どもを、学校という1つの場だけに押し込める必要はないと思います。その子の性にあった様々な教育方法の選択肢があってもいいのではないでしょうか。


わが家にも小・中学生の息子が3人おりますが、その3人にも本当に様々な個性があります。実際、本人に起こったあらゆる出来事が原因で不登校を余儀なくされてしまった息子もいますし、逆に学校へ行くことが楽しくて毎日元気に通学している息子もいます。

学校で教育を受けた方がその子の性分に合っているなら通学を選択すればいいと思いますし、自宅やその他の方法で教育を受けることがその子の性分に合っているのなら、学校以外の選択肢があってもいいのかなと思うのです。

あ、ただね、私はここで「学校」という存在を否定しているわけではないので、その点はどうぞご理解くださいね。​教育というものを子ども達全員に受けさせる必要はあると思いますが、その形は皆が必ず同じじゃなくてもいいのではないか、ということをお伝えしたいのです。


日本では義務教育として「学校へ通い、学校で生活を送ることがすべての基本」で、不登校児や、精一杯努力をしても学校に馴染めない子ども達に、適した形で教育を受けられる手段がありません。


やむを得ない事情よって学校への通学が困難となった場合、その子の状況に応じたフリースクールやサポート校などの施設でお世話になることは可能ですが、これらの機関は義務教育校として国の認可を受けていないことから、子ども達は学校に籍だけを残したままの状態で、あくまでも学校の補助的な存在としてその施設へ通うことになります。


そのため対象のご家庭は、子どもが学校に在籍しているにも関わらず、他の教育施設に入るための多額な費用を準備しなければならなくなってしまいます。

また海外においてはすでに多くの国で合法となっている、ホームスクールなどの自宅教育を望むご家族も中にはいらっしゃいますが、通学することを教育の主体としている日本ではこの様なスタイルはなかなか受け入れられず、世間から非常に厳しい目を向けられてしまう、というのが現状です。

国が子ども達に義務教育を定めているというのなら、子ども達には誰一人例外なく、たとえ不登校の状態であっても無償で普通教育を受ける権利が与えられているはずです。


その教育が「学校に通えなければ受けられない」という限られた選択肢しかないのであれば、教育法そのものをもっと真剣に見つめなおし改善していく必要があるのではないでしょうか。

学校だけが社会に適応できる能力を育んでいくための、たった1つの重要な場所ではないと思います。人間関係だって、人としての協調性だって、学校にいなければ養えないなんてことはないと思います。

子ども達1人1人の個性を本当の意味で理解し・引き伸ばしてあげることができる、そしてどの様な方法でも子ども達が安心して教育を受けることができる、そんな柔軟性のある教育方針というものが構築されることを、願わずにはいられません。

(平成25年6月22日 記)

お話の続きはパート3へ


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